『出版社のつくり方読本』(出版メディアパル)の読書感想文
岡部一郎、下村昭夫(著)
2017年11月出版/1200円+税/A5判/1色刷り/表紙カバーあり/
本文14Q/128頁/左開き/文字は横組み/1ページ35文字×31行
柱:章タイトル・左上、節タイトル・右上
<出版社>
<Amazon>
「ひとり出版社」ってご存じですか?
以前、このブログでも紹介したのですが、もし、ひとり出版社をするなら、具体的にどうするのか気になり、本書を手にとりました。
editorbookreview.hatenablog.com
<目次>
1.やっぱり「ひとり出版社」は難しい
出版社を設立し、会社として機能していくには、1)会社設立、2)取次口座開設、3)本制作・出版、4)流通といった大きな流れをしっかり把握しておくべきです。
その中でハードルが高いのが、2)と4)になってきます。
取次口座開設が難しい理由と対処法
本書では、
「取次に口座開設が出来るかどうか」、これが出版社を立ち上げるための、一番の難関なのです。出版活動を行うのに、口座開設は絶対条件ではありませんが、すでに出版社は3400社以上もあり、「これ以上出版社は必要ない」と取口は考えている風潮がありますので、簡単に口座開設はしていません。
とあり、 なかなか、新規参入が難しいとのこと。
しかし、
日本には3400社以上の出版社がありますが、これは取次口座を自前で持っている出版社の数で、取次口座は持っていないが「出版活動はしているという企業や個人を含めれば、その数は9000社」を超えていると言われています。
実際、取次口座を持っていない出版社も数多くあるようです。
なお、その取次口座を持っていない出版社の対処法としては、下記のような口座を貸してくれる会社があるそうです。
出版業界の中には、口座貸しに特化した販売代行会社があります。よく知られているのは「星雲社」や「サンクチュアリ・パブリッシング」などです。
難しい流通の大きな力となる会社
本書では、「地方・小出版流通センター」
http://neil.chips.jp/chihosho/
が紹介されていました。
ここは、
地方出版社や小出版社から出版物を仕入れ、大手取次会社の流通ルートに乗るための取次業務を行う頼もしい会社
で、
その業務内容は「書籍、雑誌の卸し」「小売り業務、広告代理業務」「書籍、雑誌の出版、発行及びその代理業務」「前各号に付帯する一切の業務」となっており、取引出版社の数は2017年8月現在1200社を超えています。
中小出版社の力になってくれそうですね。
2.取次口座開設、流通のハードルを回避する方法
「ひとり出版社」をするためには、先ほどお伝えしたように、取次口座開設や流通がハードルとなりますが、取次口座がなくても出版はでき、また、流通は「地方・小出版流通センター」に相談すれば良いということがわかりました。
でも、これでも、まだまだ大変そうです。
今まで、企画・制作を主にしてきた私は、もう少し簡単な方法があれば良いのに…と思ってしまいます。
そこで、本書では、下記のような方法を提案されていました。
企画を売り込む
本書では、持込原稿について紹介されていました。
出版社には多くの持込原稿が送られてきます。(中略)本当に企画力に自信があるなら、「本をつくって販売する」よりも、「企画そのものを販売する」ほうが、はるかに効率がよい、という考え方があります。
たしかに、このコロナ禍で、私の出版社でも持込企画が多くなってきたように感じます。そのため、最近、持込企画対応の仕事もまわってきました。
私の出版社では、すべての持込企画に目を通し、検討を行っています。
その経験より採用・見送りとなる基準などもわかりますので、これなら、私にもできそうかなと思ったり…。
取次に依存しないで本を販売する
本書には、取次に依存しないで本を販売する方法として
・直接書店に卸す
・直接読者に販売する
・特定の読者からの委託で本をつくる
・ネット販売で活路を拓く
・ネット配信は究極の電子出版
が紹介されていました。
最近、読んだ記事で、
があります。
新型コロナの給付金10万円で、ひとり出版社を立ち上げ、ベストセラーを出版されたという記事です。
この出版社は、Amazonでの販売をメインでされているようです。
取次を介さないで、ベストセラーを出した良い例ですね。
3.本の構成
第1章 出版社のつくり方<基本編>
→会社設立、取次口座開設についての解説が載っています。
第2章 出版社のつくり方<応用編>
→取次口座開設、流通についての解説です。
第3章 初めての本づくり入門
→本制作・出版に関する内容です。著作権のこともしっかり説明しています!
付章 一人出版社 出版メディアパルの舞台裏
~本づくりの心と技を求めて“本の旅”~
→出版メディアパルの軌跡を知ることができます。
この1冊で「出版社をどう立ち上げて、どう展開していくか」が大変よくわかります。
個人的には、今、携わっていない取次のこと、流通のことがわかり、よかったです。
出版社を立ち上げなくても出版社に所属している以上、知っておいたほうがいい内容だと思います。
また、本づくりに慣れていない方も、おおまかな流れや基礎知識は得られますので、お勧めです(今度、新人さんにも読んでもらおうかな…)。